心身ともに傷つけない方法で、子どもの発達を促し、子どもの行動を正しい方向に向かわせることを目的とします。
親子のよりよいコミュニケーションをとり、親が子どもに対して前向きに配慮することが基本となります。そういう基本ができて、ようやく子どもは正しい行動を身に付け、自分自身を素直に受け取れるようになることにより、問題行動を起こしにくい子になる傾向があります。
そのためには、家庭や環境・親の環境を整えるための準備が必要です。
このセクションではまず、親として心構え・子どもとの向き合い方を学びます。
前向き子育てにのための7つの基本的なポイント
- 安全に遊べる環境作り
はいはいや歩けるようになると怪我や事故の危険性が増えます。危険なものを手の届かないところに置いたり、危険な場所には行けないようにするなどして安心して過ごせる環境を作りましょう。 - 積極的に学べる環境作り
つきっきりでいる必要はありませんが、子どもが近ついて来たときは手を止めて、できるだけ時間を割いて付き合いましょう。子どもも自分でやってみようということには励まします。また、親が手本を見せてあげることにより、子どものやる気を育て、好ましい行動には褒めてあげましょう。 - 一貫した分かりやすいしつけ
なかなか難しいことですが、基準を変えないことです。また、間違った行いにはすぐに対応し、正しい行いを教えることで、自立心を学び、問題行動が少なくなると言われています。 - 子どもの特性に適応する
子どもが特性(発達障害)などを持っていると診断されるとショックを受けたり、拒否反応がでることでしょう。ただ、早期に治療や支援を行うことにより、普通の子と変わらないように、逆に天才的な能力を発揮することもあります。 - 現実的な期待感を持つ
子どもに多くの期待をしない、とはいいつつ、あまり期待しすぎないのも良くありません。
この子はどんなことが苦手で得意なのか、何がしたいのかを聞いて、現実的な期待感を持ちましょう。 - 地域社会の一員となる
人間は一人で生きていくことはほぼできません。もし障害があったとしても最低限のコミュニケーション力をつけるために、地域での活動や学校などで同年代の子どもとふれあう機会を作ってあげましょう。この子は無理だからと決めつけたり、過保護に育てることは子どもにとっていいことではありません。 - 親としての自分を大事にする
子育てをするには、親の余裕が必要です。信頼できる人がいる、仲間に恵まれている(コミュニティーに参加する)、施設などに子どもを預けて余暇を楽しむなど、子どものための人生と思わず、一人の人間として自分の人生も大事にしてください。
子どもの問題行動の要因
子どもの問題行動の原因を探りましょう。子どもであっても行動には理由があります。その理由が分かれば対応方法も見えてきます。
- 遺伝的に受け継いだもの、特性(発達障害)によるもの
正直、家庭内での対応には限度があります。少しでも疑わしい場合は早めに受診し、支援施設も含めて対応してもらいましょう。小さいうちにしておかないと取り返しがつかなくなります。 - 間違ったご褒美の与え方
面倒だから欲しがるものを与えておこう。どの家庭でもあると思いますが、子どもは問題を起こせば欲しいものが手に入ると思い、もらえないと余計に悪化する可能性があります。 - 好ましい行動の無視
良い行動を取ったときは当たり前のことであっても褒めてあげましょう。無視されると注目を引くために悪さをする、といった悪循環を起こすことがあります。 - 他人の行動をまねる
子どもはスクールの友達や、テレビ・youtubeで見たものの真似をします。特に両親の行動を良く見ており、例えば、親が怒って怒鳴ったりすると、子どもは「怒ったときは怒鳴ってもいいんだ」と学んでしまいます。 - 指示の与え方
子どもが理解できないような指示の与え方は悪影響です。例えば、指示が多かったり、次々に指示を出されたり、子どもが何かに集中している場合だったり、「いや」と言える質問形式だったり。
子どもが分かりやすいように、単純で具体的に「~して」というふうに指示をしましょう。 - 不規則な生活
起きる時間、食事の時間、お風呂の時間、寝る時間など、規則正しい生活を送りましょう。
不規則な生活は、子どもが対応できずにイライラしたり、親の方もそれがストレスになったりと悪循環のもととなります。 - 感情をぶつける、批判する
あいまいな言葉で怒鳴ったり、行動ではなく子ども自身を批判したりすると、子どもの自己肯定感が低くなりネガティブ思考になりがちです。 - 効果的でない罰し方
怒るだけでどうすればいいのかを言わない。親が実行できないことを指示する。
問題を起こしたときに言わない。後になって言われても子どもは理解しづらい。
7つのポイントでも書きましたが、一貫性のないしつけでの罰は矛盾が生じ、子どもは混乱して何が正しいのかがわからなくなります。
現在の子どもの状況に合わせた目標
問題行動の原因となる要因が分かったら、次は問題行動をどう変えて行くかを考えます。子どもはどうするのが正しいのか分かりません。親が、どんなことを子どもに身につけさせ、行動をどう変えたいのかを決め、教えてあげる必要があります。そのためには、まずは現在の子どもの状況に合わせた目標を以下の項目から親が立てましょう。
どんなことを子どもに身に付けたいか
他人とうまくつきあえる
- 適切に自分の考えや要求を表現できる
- 必要な時に、援助や助けを求められる
- 大人から頼まれたことに協力できる
- 他の子どもと交代したり、分担したいできる
自分の勘定をコントールする
- 他の人を傷つけないで自分の感情を表現できる
- 危害を与えるかどうかを、行う前に考えられる
- 自分に対しても他の人に対しても、前向きな感情を持てる
- ルールと限度をわきまえられる
独立心がある
- 絶えず大人の気を引くことなく、自分で何かをしていられる
- 自分の身の回りのことをする(例:着替え、食事、トイレ)
問題を解決できる
- 何事にも興味関心を示す
- 質問し、自分なりの考えを持てる
- 解決策の代案を考えられる
- 交渉したり妥協したりできる
- 自分で決定し、問題を解決できる
子どもの行動を記録し、分析する
子どもの行動で気になる点がある場合、記録を付けましょう。
その理由は以下の点です。
- 本当に問題のあるこうどうなのか(例:全然言うことを聞かないを思ってたが、実は言うことを聞くことと聞かないことがある)
- 子どもの行動に親がどう対応しているのか、また、どんな時にどんな理由でその行動を起こすのか
- これから学ぶ対応の仕方で、子どもの行動の変化を知ることができる(例:良くなっている・悪くなっている・変わらない)
- 目標をいつ達成したのか
行動日記
いつ、どこで、その行動が起こり、直前は何があったか(原因)、直後に何があったか(対応)を記載します。それにより、以下の点が分かるようになります。
- 子どもの行動パターン
- どのくらい起こっているのか(頻度)
- 親がどれだけ一貫した対応をとっているのか
- 起こりやすい時間帯と場面
- きっかけや原因となっていると思われること
- 間違って与える褒美にになってしまっていること
「行動日記」には以下の項目を記録するといいでしょう。
起こったこと | いつ、どこで | 直前の出来事 | 直後の出来事 | コメント |
---|---|---|---|---|
弟の上を引っ張った | 7:30 リビング | 朝ご飯の準備のために親が席を外した | 悪ふざけはやめなさいと怒鳴った | 逃げていった |
おもちゃを投げつけてきた | 15:30 リビング | おもちゃを片付けなさいと言った | 落ち着きなさいと行って、その場を離れた | |
大声で泣き、癇癪を起こした | 18:00 リビング | 何か話かけて来ていたが夕飯の準備で無視していた | 「どうしたの?」と言って話を聞いてあげた |
まずは1週間でいいので行動日記を記録してみましょう。なにかしらの気づきを得られると思います。
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